消費者にお得感を伝えるために使われる「二重価格表示」は、チラシやECサイト等で頻繁に目に入る表記方法です。
本記事では、二重価格表示に関するルールや、比較対照価格の種類、そして適正な表示を行うためのポイントについて詳しく解説します。
二重価格表示とは?
二重表示価格とは、現在の販売価格と比較対照価格を並べて表示することで、値引きやお得感を表す手法です。
例えば「通常価格10,000円のところ、今だけ5,000円」のような表示がこれにあたります。
この場合、販売価格が5,000円、比較対照価格は10,000円となります。
このような表示は、正しく行われれば一般消費者の適正な商品選択と事業者間の価格競争の促進につながり、誤った表示をすると消費者に誤認を与え、景品表示法に反し不当表示となる恐れがあります。
比較対照価格
比較対照価格には、いくつかの種類が存在します。
それぞれの価格には適正な表示方法が求められています。
過去の販売価格
「当店通常価格」や「セール前価格」などといった過去の販売価格を比較対象価格として表示する場合です。
同一の商品について「最近相当期間にわたって販売されていた価格」を比較対照価格として表示する場合には、不当表示に該当する恐れはありません。
同一の商品について「最近相当期間にわたって販売されていた価格」とはいえない価格を比較対照価格として表示する場合には、当該価格がいつの時点でどの程度の期間販売されていた価格であるかなどその内容を正確に表示しない限り、不当表示に該当する恐れがあります。
「最近相当期間にわたって販売されていた価格」の考え方
- セール開始時点から過去8週間のうち、4週間以上の販売実績があれば、過去の販売価格として表示できます。
- 販売開始から8週間未満のときは、その販売期間の過半かつ2週間以上の販売実績があれば、過去の販売価格として表示できます。
- 上記を満たす場合であっても、実際に販売した最後の日から2週間以上経過している場合には、「最近相当期間にわたって販売されていた価格」とはいえないとされます。
- 販売期間が2週間未満のときも、「最近相当期間にわたって販売されていた価格」とはいえないとされます。
不当表示に該当する恐れのある表示
- 実際に販売されていた価格よりも高い価格を表示を「当店通常価格」等としている場合。
- 販売実績がない商品やセール直前に販売開始した商品等の価格を「当店通常価格」等としている場合。
- 過去の販売期間のうち短期間において販売されていた価格を「当店通常価格」等としている場合。
- 「旧価格または当店通常価格」等がないにもかかわらず、比較対照価格として、任意の価格を「旧価格または当店通常価格」等として表示している場合。
将来の販売価格
販売当初の段階で需要の喚起等を目的に、将来の時点における販売価格を比較対照価格に用いる場合です。
不当表示に該当する恐れのある表示
- 実際に販売することがない価格である場合。
- ごく短期間でのみ当該価格で販売するにすぎない場合。
将来の価格として表示された価格で販売することが確かな場合以外において、将来の販売価格を比較対照価格に用いることは適切でないとされています。
競争事業者の販売価格
「市価」や「他店販売価格」として特定の競争事業者の販売価格を比較対象価格として表示する場合です。
「市価」を比較対照価格に用いるときは、地域内の事業者の相当数が実際に販売している価格を用いる必要があります。
「特定の競争事業者の販売価格」と比較する場合は、その事業者の実際の販売価格及び事業者の名称を明示する必要があります。
不当表示に該当する恐れのある表示
- 最近時の市価よりも高い価格を「市価」としている場合。
- 最近時の競争事業者の販売価格よりも高い価格を「競争事業者の販売価格」としている場合。
- 商圏が異なり一般消費者が購入する機会のない店舗の販売価格を「競争事業者の販売価格」としている場合。
- 販売する商品とは同一ではない商品の競争事業者が販売している価格を「競争事業者の販売価格」としている場合。
メーカー希望小売価格
メーカーや輸入元など製造事業者等が設定する希望小売価格で、あらかじめ新聞広告・カタログ・商品本体への印字等により公表されているものであれば比較対照価格として表示することができます。
不当表示に該当する恐れのある表示
- 希望小売価格よりも高い価格を「希望小売価格」としている場合。
- 希望小売価格が設定されていないにもかかわらず、任意の価格を「希望小売価格」としている場合。
- プライベートブランド商品について小売業者が自ら設定した価格や、製造業者等が専ら販売している商品について自ら設定した価格等を「希望小売価格」としている場合。
- 製造業者等が当該商品を取り扱う一部の小売業者に対してのみ呈示した価格を「希望小売価格」としている場合。
他の顧客向けの販売価格
同一の商品であるが、顧客の条件に応じて販売価格に差が設けられている場合です。
「一般価格50,000円」のところ「会員価格30,000円」等のような表示がこれにあたります。
当該販売価格が適用される顧客の条件の内容等について、実際と異なる表示をしたり、あいまいな表示をした場合には不当表示になる恐れがあります。
不当表示に該当する恐れのある表示
- 容易に会員になることが可能であって、その価格での購入者がほとんど存在しないと認められる価格を比較対照価格に用いる場合。
- 特定の時期に限定されるピーク時の価格を「当店標準価格」等として平均的な販売価格であるかとの印象を与える表示を行い比較対照価格に用いる場合。
適正な二重価格表示を行うためには?
適正な二重価格表示を行うためには、いくつかのポイントを押さえる必要があります。
1.比較対照価格の根拠を証明する
比較対照価格が実際にその価格で販売されていたことを証明できる資料が必要です。
具体的には、販売実績や他の店舗の価格情報を記録・保管しておきます。
たとえば、過去の販売価格を比較に使う場合、その価格でどれだけの期間販売されていたかを明確に記録しておきましょう。
2.過去の価格を使う場合、明確に時期を表示する
特に「最近相当期間にわたって販売されていた価格」とはいえない価格を比較対照価格として表示する場合には、当該価格がいつの時点でどの程度の期間販売されていた価格であるかなどその内容を明確に表示します。
3.適正な期間での価格比較を行う
比較対照価格は、一定期間安定して販売されていた価格である必要があります。
「最近相当期間にわたって販売されていた価格」の考え方に則った表示を心がけましょう。
まとめ
二重価格表示は、適切に行えば消費者にお得感を伝える有効な手段ですが、誤った表示を行うと景品表示法違反となり、トラブルに発展する恐れがあります。
比較対照価格には様々な種類があり、それぞれの価格が適正であるかどうかを確認するためのルールがあります。
適正な二重価格表示を行い、信頼性のある価格表記を心がけましょう。