景品表示法は、一般消費者に対する不当な表示や過大な景品類の提供を制限することで、公正な取引環境を保護し、一般消費者がより良い商品・サービスを安心して選ぶことができる環境づくりのための大切な役割を果たしています。
今回は景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)の基本を見ていきたいと思います。
景品表示法の概要
一般消費者は、より質が高く、より価格の安いものであったり適正なものを求めています。
事業者はそれに応えるために、商品やサービスの質を向上させ、より求めやすく販売できるよう創意工夫します。
それに対し、不当な表示や過大な景品類の提供が行われると、一般消費者の判断に悪影響を与え、その利益が損なわれることになりかねません。
景品表示法は、商品やサービスの品質・価格等を偽って表示することを厳しく規制し、過大な景品類の提供を防ぐために景品類の最高額を制限することにより、一般消費者がより良い商品やサービスを自主的かつ合理的に選べる環境を守っています。
不当な表示の禁止
景品表示法では、一般消費者に商品やサービスの品質や価格について、実際のもの等より著しく優良又は有利であると誤認される表示(不当表示)が禁止されています。
表示とは
事業者が商品やサービスの内容、取引条件について行う広告等の表示が対象になります。
- チラシ
- パンフレットや説明書
- ポスターや看板
- 新聞や雑誌に掲載された広告
- テレビCM
- ウェブサイト 等
対象となる価格表示
事業者の業務形態(製造業者、卸売業者、小売業者、通信販売業者、輸入代理店、サービス業者等)を問わず、一般消費者に対して商品やサービスを供給する際に行う価格表示のすべてが対象とされています。
不当表示には大きく分けて、次の3種類があります。
優良誤認表示
商品やサービスの品質、規格その他の内容についての不当表示です。
1. 内容について、実際のものよりも著しく優良であると一般消費者に示す表示
例)中古自動車の走行距離が10万キロなのに「5万キロ」と表示した場合
2. 内容について、事実に相違して競争事業者に係るものよりも著しく優良であると一般消費者に示す表示
例)この技術は当社独自のものと表示したが、実施は競合他社も同様な技術を使っている場合
有利誤認表示
商品やサービスの価格その他の取引条件についての不当表示です。
1. 取引条件について、実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示
例)特別価格8,000円と表示しているが、実際は通常価格と変わらない場合
2. 取引条件について、競争事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示
例)他社商品の1.5倍の量と表示しているが、実際は同程度の容量しかない場合
その他誤認されるおそれのある表示
特定の商品・サービスについて内閣総理大臣が指定(告示)した不当表示で、次の7つが指定されています。
1. 無果汁の清涼飲料水等についての表示
2. 商品の原産国に関する不当な表示
3. 消費者信用の融資費用に関する不当な表示
4. 不動産のおとり広告に関する表示
5. おとり広告に関する表示
6. 有料老人ホームに関する不当な表示
7. 一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示
7.について令和5年の改正では、事業者が自社の商品・サービスをインフルエンサーに依頼してSNSへの投稿をする際に、広告であることを明示させない場合や、事業者が第三者になりすまして自社の商品をPRするコメントなどをSNSに投稿する場合など、いわゆる「ステルスマーケティング」に対する規制が追加されました。
過大な景品類の提供の禁止
一般消費者が景品によって商品・サービスを選ぶようになると、質の良くない商品や価格の高いものを買わされて不利益を受けてしまうおそれがあります。
景品表示法では、一般消費者がこのような不利益を受けることがないよう、景品類の最高額、総額などが制限されています。
規制の対象となる景品類の提供行為は次の3種類があります。
総付景品(ベタ付け景品)
商品の購入者や来店者に対し、もれなく提供する景品です。
- 商品の購入者全員にプレゼント
- 来店者全員にプレゼント
- 申込みや来店の先着順にプレゼント 等
一般懸賞
商品やサービスの利用者に対し、くじ等の偶然性、特定行為の優劣等によって景品類を提供することです。
- 抽選やビンゴ等により提供
- パズルやクイズの解答の正誤により提供
- 競技や遊技等の優劣により提供 等
共同懸賞
商店街や一定の地域内の同業者が共同して行う懸賞です。
- 一定の地域(市町村等)の小売業者又はサービス業者が共同で実施するもの
- 中元・歳末セール等、商店街が共同で実施するもの
- 「電気まつり」等、一定の地域の同業者が共同で実施するもの 等
違反してしまった場合
景品表示法に違反する行為については、事業者側に故意・過失がなかったとしても、法に基づく措置命令や課徴金納付命令が行われることとなりますので注意が必要です。